日本では毎年夏から秋にかけて台風が訪れ、強風と大雨をもたらします。しかし、世界各地では台風がタイフーンやハリケーン、サイクロンと呼ばれ、それぞれに違いがあります。この記事では、これらの呼び名の由来と違いについて解説します。
台風の語源と名前の由来 台風という語はいくつかの説がありますが、主なものを紹介します。
- 大風からの派生 台風という言葉は元々、中国の広東省や台湾で用いられていた「大風」が語源とされています。これが西洋に伝わり「typhoon」となり、その後再びアジアに戻り「颱風」の漢字が使われるようになったとされています。
- アラビア語由来 アラビア語の「tūfān」(嵐を意味する)から派生したという説もあります。これが英語の「typhoon」に転化し、アジアでは「颱風」とされました。
- ギリシア神話からの影響 ギリシア神話に登場する風の怪物「テュフォン」が名前の由来という説もあります。これが「typhoon」となり、さらにアジアで「颱風」とされたとされています。
日本では古くは「野分」と呼ばれ、後に「颱風」を経て現在の「台風」となりました。特に、1946年の当用漢字の制定により「台風」という表記が定着しました。
熱帯低気圧と台風の違い 熱帯低気圧が一定の条件を満たすと台風と呼ばれるようになります。これには風速や発生地点など、複数の要素が関与します。
地域による呼び名の違い
- タイフーン:主にアジア地域で使用される呼称です。
- ハリケーン:アメリカ大陸やカリブ海地域で用いられます。
- サイクロン:インド洋やオーストラリア周辺での呼び名です。
これらの違いは地域による名称の違いであり、基本的な気象現象は同じです。どの地域でも、これらの強い風を伴う気象現象には注意が必要です。
このように、台風やその他の呼び名には面白い歴史と文化的背景があることを知ることで、天候現象への理解が深まります。
台風の命名とその背景
台風は、その発生した年と順番によって「台風●号」という形で番号が付けられます。これは気象庁が定める方法です。
さらに、台風には個々の名前も付けられます。これは、日本を含むアジア14カ国が加盟する台風委員会が、各国が提案する名前を採用して命名します。これにより、140個の名前がローテーションで使われ、約4~5年ごとに一巡します。例えば、日本からは星座や動物にちなんだ名前が提案されています。
台風と認定される条件
台風と認定されるためには、特定の条件を満たす必要があります。北西太平洋や南シナ海で発生し、最大風速が17.2m/s(約34ノット)以上でなければなりません。この風速は、歩行が困難なほど強いです。
台風の強さと大きさの基準
気象庁では、台風の強さを風速によって、大きさを風が強い範囲の半径で定義しています。強さには「強い」「非常に強い」「猛烈な」などのカテゴリーがあり、大きさには「大型」「超大型」といった区分があります。これにより、台風の影響範囲と潜在的な危険性を評価します。
熱帯低気圧は、その発生する地域や強度によって異なる呼び名が使われます。ここでは、「タイフーン」と「ハリケーン」の条件とその違いについて詳しく解説します。
タイフーンの定義
「タイフーン」とは、北西太平洋または南シナ海で発生した熱帯低気圧が、最大風速が33m/s(64ノット)以上に達した場合に使用される名称です。この条件は世界気象機関(WMO)による熱帯低気圧の分類基準に基づいています。
地域ごとの分類
- 北太平洋西部および南シナ海:
- 17m/s未満: トロピカルディプレッション
- 17~25m/s: トロピカルストーム
- 25~33m/s: シビアトロピカルストーム
- 33m/s以上: タイフーン
ハリケーンの定義
「ハリケーン」とは、北大西洋、北東太平洋、または北西太平洋に発生した熱帯低気圧で、最大風速が64ノット(33m/s)以上の場合に名付けられる名前です。ハリケーンは特にカリブ海やメキシコ湾で発生することが多く、地域によってタイフーンに変わることもあります。
地域ごとの分類
- 大西洋および北太平洋東部(カリブ海、メキシコ湾含む):
- 17~33m/s: トロピカルストーム
- 33m/s以上: ハリケーン
ハリケーンは、その勢力に応じてカテゴリー1から5までの5段階に分類され、カテゴリー3以上のものは「メジャーハリケーン」と呼ばれます。これは、風速が約50m/s以上のものを指し、特に強い破壊力を持つとされています。
以上のように、タイフーンとハリケーンは発生する海域と最大風速で区別されますが、いずれも熱帯低気圧の一種であり、その強度や影響は同様に大きいと言えます。
「サイクロン」という用語は、一般的に低気圧全体を指す言葉として広く使われますが、特定の地域で強い熱帯低気圧を示す際に用いられることもあります。
サイクロンの定義と特徴
サイクロンは主にインド洋や南太平洋で発生し、最大風速が34ノット(約17m/s)以上の熱帯低気圧を指します。この用語は、特にインドやオーストラリア近辺で使われますが、その使われ方は地域によって異なることがあります。
地域別のサイクロンの分類
- 北インド洋(ベンガル湾とアラビア海を含む):
- 34〜48ノット(17〜25m/s): Cyclonic storm
- 48〜64ノット(25〜33m/s): Severe cyclonic storm
- 64ノット以上(33m/s以上): Very severe cyclonic storm
- 南西インド洋:
- 34〜48ノット(17〜25m/s): Moderate tropical storm
- 48〜64ノット(25〜33m/s): Severe tropical storm
- 64ノット以上(33m/s以上): Tropical cyclone
- 南太平洋および南東インド洋:
- 34〜64ノット(17〜33m/s): Tropical cyclone
- 64ノット以上(33m/s以上): Severe tropical cyclone
サイクロンは地域を移動する際、その名称が「タイフーン」や「ハリケーン」に変わることがあります。これは主に発生地と現在位置によって呼び名が変わるためです。
参考情報
台風とサイクロンの主な違いは、台風が最大風速34ノット(17m/s)以上の熱帯低気圧を指すのに対し、サイクロンはそれが64ノット(33m/s)以上の場合に用いられる点です。日本でいう「台風」は、国際分類でいう「トロピカルストーム」以上に相当し、サイクロンに関しては「強い」「非常に強い」などの形容詞と組み合わされて使われることがあります。
台風やサイクロンは共に大きな被害をもたらす可能性があるため、発生時は最新の気象情報を注意深く確認し、必要な準備を行うことが推奨されます。